【座右の書】ブッダ入門

何となく座右の書を紹介しておこうかと思います。

ブッダ入門
中村 元

春秋社 1991-09
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哲学というものをきちんと意識した最初の記憶は高校2年の漢文で老荘思想(「無の思想」ってヤツです)を学んだ時で、「無、ですか。。。。」と、期末試験勉強もそっちのけで、実家の部屋の小さな天窓から冬の夜空(窓が汚れてろくに見えやしないんですが)を眺めながら、思考に耽ったのをよく覚えています。漢文の授業だったので、先生(同先生は加賀まりこと同棲していたという経歴を持つという噂で、学校で履いているサンダルの底を、授業中に誇らしげにべろべろ舐めるという、コンテキストの見えない主張をする人物だったが、これは哲学とは全く関係無い)は哲学を云々語ったのではなく、さらりとリファーしただけだったのだろうけども、ぼく的にはその言葉は相当に嵌ったのだろう。

それから、哲学?真理?悟り?みたいなものって何だろう、と自分なりにいろいろ考えてみたもので、下校時、駅から自宅までの5,6分間、とぼとぼ歩きながら、そんなことに耽ってました。その頃から、大学4年終盤ぐらいまでは、正確な言葉は忘れましたが、老荘思想をベースにした、自分なりの悟りを持っていたのです。

そして、「ブッダ入門」に出会いました。内定時、銀座にタッチタイプの教室に(会社の強制)通学してたのですが、その前にふと立ち寄った書店で見つけました。もともと「悟りって何だ?」なんていう言葉を振り回してたので、仏教には興味あったんですが、どうも宗教というバイアスのかかってしまった話しを聞いても悟りが感じられず、ふらふらしてたところに、ふと目に入ったのがこの本でした。「はじめに」を数行読んだところ、曰く

「かれ(ブッダ)の生涯を賛美した『仏伝』と呼ばれる書物は昔からいくつも伝えられています。しかしそれらは、まるで妖怪譚のような奇蹟の物語と、誇張した讃辞にみちていて、ゴータマ・ブッダが実際にどのような人であって、地上でどのような生活をしたのか、ということを伝えてくれません。
われわれはその実際を知りたいのです。」

ここまで読んだところで「あこの本だ」と思いレジへ進みました。そして期待を裏切らず、ブッダの悟りに至る実際らしきものを知ることが出来ました。つまり宗教としての仏教ではなく、ブッダという人の哲学に触れることが出来た、とでも言えるかもしれません。

んでこの本、ブッダの悟りとはなんぞや、と書いてあるかと言うと、「悟りとは迷いのない境地に達することではなく、人生の過程において迷い、苦しみ、それをひとつひとつ決断し、そして決断を反省していくこと、その中にこそ悟りがある」ということなわけです。これは、本当に「目から鱗」という感じがしました。いや、目から鱗というより、あーなるほどこういう言葉にすればいいのかという、こうひっじょうにしっくりと、頭の中で「カチッ」と音がして何かがはまった感じがしました。それ以降、このコンセプトは、ぼくの人生哲学となり、様々な言葉を経て、いまも相当こころの核にあるものと言えます。

ちなみに、ここ数年、このコンセプトを様々な言葉で表現してきました。あちらこちらからのぱくりで、リミックスしてるものですが、「すべてはあるがまま、あるがままがすべて。それを知り、受け止め、その上でどうするかを決めるべし」(元ネタ不明)、「人生はそれ以上でもそれ以下でもない」(英語の「nothing more, nothing less」)、「can you make the CHOICE」(マトリクス・シリーズ)、

そして、最新の言葉は、「可能性の選択」と、「エネルギーとコンテキスト」です。いま直感的に一番しっくりきてます。前者は人生というもの、後者は生命というものを表す言葉という風に捉えています。以前も書きましたが、この2つの言葉の考察が、今年のテーマでもあります。

ということで、なんだかよくわからないことをたくさん書きましたが、要は、その後様々なInputに影響を受け、使うことばは変わりましたが、この「ブッダ入門」という本がすべての始まりである、ということから、ぼくの座右の書となっている、ということです。後半は、年末年始のブログのダイジェストみたいになっちまいましたが、その原点をお話ししたかったというわけです。

尊敬する有名人は?という質問には「ブッダ」と即答してますが、ブッダが悟りを開いたのが12月8日というぼくの誕生日であることは、実は相当なぷち自慢だったりしますが、あとで母親から聞いたところ、この本の著者である中村元さんは、遠い親戚だそうで、なんとも縁の深い話しだなあ、と最近でもしみじみ感じます。


おわり
PS:本って、これだから辞められませんね。Amazonも良いですが、たまには本屋でジャケ買いしないといけませんね。ところで皆さんの座右の書とその想いって、どんなのですか?