【Misc】魔法

ぼくは、世の中に魔法って存在すると思う。

どういう魔法かっていうと、ヒトの輪の魔法である。

どっかにちょろりと書いた気がしますが、Chemistryとか呼ばれるものだったりするかもしれない。2人以上のヒトが出会って、相互刺激により、「何か」が生まれる、そんな感覚である。

この魔法って、誰しも一度ぐらいは経験があるはず。特に多いのが、文化祭とか。普段あまり仲良くないクラスメートが、異様に一致団結して燃えちゃう感覚、「ひとつになったね!」な感覚、文化祭が終わって打上ちっくなことの後、学級委員が終わりの挨拶した直後から解け始めてしまう感覚。あれ、なんてことはなくて、魔法なんですよね。

ぼく自身、振り返ると魔法を感じた瞬間、っていくつかは明確に覚えている。ひとつはやはり中学校の文化祭。その後は、社会人になってから、同期5人で第一回フジロック(わりとタイムリーなネタですね)に行った時。それから、数年前に関わってたプロジェクトの提案書を、殆ど初対面のヒトと2,3日徹夜して作った時。こういう瞬間は今でも思い出すと、「ああ、魔法かかってた」と、その感触を胸に甦らせることができる。

たぶん、恋というか「両想い」っていう瞬間も、魔法なんだと思う。まず、なんか「あ!」っていう瞬間が二人にあって、その後、お互いの目を見れば「ええ、感じてまっせ!」って確認できちゃう、っていう感じかな。恋までいかなくても、「あ!こいつ親友だ」っていう瞬間もあると思われる。恋は始まりに感じることが多い気がするけども、親友はどっちかと言うと関係が成熟しつつあるぐらいのタイミングで、なんか大勢でいる場とかで、ふと「あ、この場にいるヒトはみんな友達と呼べるヒトだけど、その中でこいつは親友ってやつだな」と感じることが多い気がする。解散する際、何も言わずに何となく二人残り、「もう一軒行くか」って行って次の店で心地良い沈黙を共有できるヒト、とも言えるかも。これも、なんてことはなくて、魔法なんでしょうね。

悲しいことに、魔法は解けてしまうものなのです。永遠には続かないのです。あまり好きな考え方ではないけども、サクラと一緒で散るから美しい、あるいは人生と一緒で終わるから美しいのかもしない。けども、魔法は解けてしまうものでも、なんども呪文を唱えることは、出来るんじゃないかと思う。

つまり、魔法使い、ってヤツですね。たぶん、こういうヒトは確実に存在します。

例えば、カリスマ?経営者。優秀な経営者ってのは、きっと魔法使いに違いない。社員に魔法をかけて、みんなでがんばろう!っていう「ひとつになってるね」感を醸成するのが仕事みたいなものだから、魔法使い。これ出来ないヒトは経営者じゃないね。管理者。

呑み会とかの盛り上げ役も。場を巧みに読んで「ひとつになって盛り上がる」感を醸成するわけだから、魔法使い。もっともただ浮いてて勢いで、ってヒトもいるかな。これは魔法使いじゃなくてイノシシ。

因みに会社でも呑み会でも何でもグループの中で、リードするヒトだけが魔法使いじゃないと思う。影から巧みなフォローを入れたり、縁の下の力持ちだったり、そういうヒトも、どっかーんと派手な呪文じゃないけど、確実に魔法を駆使してると言えるんじゃ無かろうか。

長く続く人間関係を多く持つヒトも、たぶん魔法使い。派手な盛り上がりはなくなるかもしれないけども、長く解けない魔法をかけるという得意技がある、やっぱり魔法使い。

最後の一個を考えると、おそらくぼくらはみんな魔法使いなんじゃないかと思えてくる。ただ、魔法を「あ、これ魔法やん」と感じる感性と、自分なりの呪文の唱え方(グループの中で魔法を生む、自分なりのコツ。別にリーダーになるわけじゃなく。)をわかってればいいだけなんだろう、と。

大勢の輪では、全員を魔法にかけるのが難しいけど、逆に巧く手分けすれば、一回魔法にかかってしまえば、その後も持続させたり、繰り返し発生させたりが出来るのかも。言い換えれば、経営の妙とでも言えるかも。

恋愛の様な、2人の輪では、魔法をかける(お互いにかけ合う)のは結構簡単だけど、逆に二人しかいないので、持続させてあり、繰り返し発生させたりするのは、何しろ手分けするヒトが2人しかいなから、難しいのかも。言い換えれば、バージンシネマの予告編前の変なナレーション*1みたく、「倦怠期になったら、映画を観ろ」的にヒトやモノという触媒を使うのが有効なのかも。

この魔法を「魔法」と悟らせてくれたのは、スティーブン・キングの小説だった。彼の作品には、いくつかこの魔法を主題にしたものがある。グロな感じや、メリケンの田舎町文化とかに埋没しててわかりにくいけど、煎じ詰めると「魔法」の話しだったりする。

これは、語り手である作家が、親友の死を切っ掛けに、いまは失われてしまった子供の頃の「仲間」の間にあった魔法へのノスタルジーを書いた一作。死んじゃった親友とはずーっと魔法が続いていたが、残り二人はエピローグを読むと、当時は爆親友だったのに、中学校に入ったら、ただ廊下で挨拶するヤツになってしまった、というくだりが、見事に魔法を語っていると思う。
IT(1) (文春文庫)

IT(1) (文春文庫)

これは、いい年こいた大人達が、子供の頃、「仲間」の魔法で化けモンを撃退したのを、大人になってから復活した化けモンを撃退しようともう一度魔法を思い出そうと奮闘する、っていう一作。こっちは、サンタクロースや魔法を信じる子供のココロと、仲間の魔法ってのをかけて語られている。を筆頭としたダークタワー暗黒の塔)シリーズに至っては、それに「Ka-tet」いうへんちくりんな名前(しかもKa-maiやらへんちくりんな活用も)まで付けている。

さらに考えてみると指輪物語(別名ロード・オブ・ザ・リング、皆さんあれ映画がオリジナルじゃないすからね)やスターウォーズも、なんか仲間の魔法でがんばるなし遂げるって話しだな。つか魔法ってフォースと一緒?いやフォースの中でも、ヒトたヒト同士の間で感じるフォースが魔法ということか。。。。。

というとてつもなくオチの無い状況ですが、この魔法、うっかり見逃しがちなんだけど、日常至る所に(自分が輪の中にいなくても)存在してるもので、結構ヒトとしての幸せの大部分を占めているものなんじゃないかなあ。魔法がかかった瞬間は天国で、でも解ける時は地獄並みに辛いこともあるけど、でもぼくはやっぱり、この魔法の為に生きてる、ってちょっとナイーヴなぼくは思ってみたい今日この頃、魔法とその予感を曇り無き眼で見定めていかないといかんですなあ。てか最後はもののけオチですかい。

おわり

PSうわー読み返したらすげー長文しかももう03時。

*1:バージンシネマでは、予告編の前にいきなり英語で「タバコすうな携帯すいっちキレしゃべるなねるなうるさくもの喰うなパンフ買え映画はいいぞおみたいなのをおもしろおかしく諭してくれるのですが、何度体験してもなんかぼく好きなんですよ一見の価値ありかも